捻じ伏せて






理由なんてものはただの気紛れと興味。
それ以外は存在しない。

いつも通りの朝を迎え、いつもどおり家臣達に指示を出しながら自分の仕事をこなしていた。
そんな中、使いとしてやってきた奴はどこか高慢な態度を身にまとい。されどけしてそれを他人に気取られぬようにしている。
計算高く、腹の底が見えない奴だった。

その腹黒さがどうも気になって、それが興味と変わるのに時間などかからず夜も更けた頃酒に誘えば。
より一層、その腹の底の色が見え隠れしている。ふてぶてしい態度を裏で取りながら、表の顔は普通を取り繕っている。
指摘されて、戸惑う事もなくすんなり本性をあらわして、ますます興味が湧いた。
その変化が楽しくて、面白くて。何よりも、どこか自分は穢れないと。そんな風に見て取れた奴を汚したくなった。

全ての行動の理念も、理由も。ほんの些細な所から生じるものだろう?

















始めに交わした口付けは互いの唾液を絡ませるだけで。
一度離した唇をまた近づけ半開きの幸村の唇を舐めると再び舌をねじ入れた。
歯列をなぞり、舌を絡ませてくる政宗へと幸村は逃げる事無く。自らも挑むかのように政宗の行為に応える。
だが流石に一つの口付けの時間が長いとなると息も切れ気味で。ほんの少し離した口の端から小さく声が漏れた。
少しだけ口を離し幸村に呼吸をさせると、それすら飲み込むようにまた口を塞ぐ。
四度、五度とそれを繰り返ししつこい位に口を堪能した政宗は完全に幸村から唇を離して見下した。
その視線が気に食わないのだろう。ほんのり色づいた目で政宗の顔を惜しげもなく睨み据えた。

「どうした?」

ただ楽しげに幸村を見下して問えば、どうようにまるで鼻で笑ったかのような態度を示しながら。

「いや・・・貴殿はてっきり口吸いだけの男かと思っただけだ。」

「ほぉ?言ってくれるな。
 合間に女のような声を幾度か漏らしていたようだが?」

首筋から鎖骨を通り胸元まで人差し指を這わしながら囁く。
その指の動きに快楽ではなく、こそばゆい感覚を際立たせて幸村はその手を弾いた。

「わからんな。妙に誘ったり拒んだり。
 まるで抱かれる事など知らんような態度だが?」

「抱かれたことなど無い。そう言う貴殿は如何なのか。」

それこそ挑戦的に言い放つ。
ぶつかる視線をそらす事無く、政宗は幸村の言葉に喉がなるような低い笑いを短く零す。

「相手が誰だとか言う事は別にどうでもいい事だが俺はある。
 だからどこをどうすればどうなって。どこが好いのかなど。」

女を扱うよりも簡単だと。
言いながら再び手を胸元から下へと這わした。
それに対しやはり、他人から与えられる快楽に慣れていない体はこそばゆさしか感じず。
政宗の態度もあってか幸村は高慢な態度をそのままに倒された体を半身起こして政宗を見て言い放った。

「女を扱うより簡単だと言うのなら、女のように抱くのは止めろ政宗公。
 貴殿の気紛れな戯れに付き合えるほど俺も人が良いわけではない。」

一瞬だけ、驚いた顔をするがすぐにそれは掻き消えて。
後に出た表情は先ほど以上に人を見下し、どこか悪戯を覚えた子供のような幼さも見受けられるが。
その纏う気配はどこまでも黒く。気配を感じた幸村は一瞬腰が本能的に逃げをうとうとした。
だがそれを許すはずも無く政宗は幸村の半身を畳へと強く押さえつけ、肩口にギリッと爪が食い込むほどに力を入れた。

「前戯はいらんか。初めてのくせに生意気な事を言う貴様には仕置きが必要のようだな。」

下肢に纏っていた物を一気に剥ぎ取り露になった幸村のソコを見せつけるように押し広げる。
突然の行動に流石に驚いた幸村は肩を押さえつける政宗の手を握り払い除けようとするが。

「何も知らん坊やに色々と教えてやるとするか。」

言うが早く政宗は慣らしもせずに自身を幸村の中へと押し挿れた。
坊や扱いされた事に反論しようとした幸村だったがしかし、政宗の行動のほうが早く口を開いた時には其処からは苦痛の声しか漏れなかった。

「っっ!」

「っ、どうした、先ほどまでの威勢はどこへいったんだ?
 女のように抱かれるのが嫌だといったからそれに応えてやったというのに・・・・っ」

慣らしもせず、初めて受け入れたそこはあまりにもきつく流石の政宗も顔を歪ませたが
それに気付くほど幸村にはまったく余裕など無く、ただ与えられる圧迫感と痛みに耐えるのみであった。
快楽などどこにも無く。今あるのはただの痛みだけで。
幸村にとってこの行為が何を生み出すのかと苦痛に耐える合間に思う。
しかし考えても体には痛みしか生まず。心にはただ相手を呪う事しか生み出さないその行為は結局の所は何も生み出さないのだと。
そう結論付け早くこの無意味な行為を終らせてしまいたいと、いまだ幸村を押さえつける政宗の手を掴んだその爪を強く食い込ませた。
だがそれをどう捉えたのか、政宗はさらに腰を深く突き入れ幸村の奥まで暴こうとする。
奥へと、突き進めば進むほど掴む手に食い込む爪もより深く。

「・・・っ、は・・・やく、おわらせ・・・ぅっ、ぐ・・・・」

「痛みだけ、感じさせて終らせたら・・っ、俺の威厳に関わる・・・、」

政宗の吐いた言葉に痛みに少しだけ浮いたような目をぶつけて睨みつけた。
先ほどから、痛みに耐えているがそれでも、与えられる始めての感覚の中視線だけは外さない幸村。
それが政宗の中で生まれた幸村への興味をより深いものとしていく。

「・・・・・ふ、 貴殿が、下手なだけで、あろう・・・・」

幸村の言葉に。目に見えて先ほど以上の黒い笑みを刻み込んだ政宗。
その変化を目の当たりにした幸村は流石に、背筋がゾッとする感覚が走った。
空いた手で腰につけていた飾り紐を解くとそれの端を口に咥えピンと張った。
何か嫌な予感がすると、そう直感で思ったが何も口にできない幸村に政宗の容赦ない言葉が降りかかる。

「・・・そう言えば、仕置きがまだだったな。」

幸村を押さえつけていた手を離すがその手を掴んだ幸村の手は離れない。
本能的にだが、その手を離してはいけないと思っているのか離す素振りなどまったく見当たらない。
爪の食い込んだ個所は一部は変色し、一部は血が滲み出ているがそんな事を気にしている様子も無く。
ただ腕を掴む手を離させる為、政宗は幸村のソレを強く握りこんだ。
突然の別の個所からの痛みに一瞬だけ声を漏らしての力を抜く。その一瞬の時間さえあれば腕を抜き去ることなど充分で。

「っなにを・・・っ!」

「自分で解かれたら意味が無いからな。」

両腕を、幸村の頭上へと一纏めにすると素早く飾り紐できつく結びつける。
抵抗する暇も与えずにさっさと縛り上げれば、その姿をどこか満足げに見下ろす政宗。
その視線が気に食わないのか。幸村はただ睨みあげる。
だがその視線など気にする事も無くもう一つ政宗は飾り紐を取り出した。今度は何をするのかと政宗の行動を目で追っていけば。

「初めに言っておこう、これは生意気な貴様への仕置きだ。
 何度貴様が懇願しようと、強請ろうと俺の意思が動かなければ解きなどしてやらない。」

反論も意見も聞かず。幸村が何かを言い出す前に既にその紐は幸村の自身の根元へと巻きつけられた。
あまりの事にまるで後頭部を強く打ち付けられたかのような痛みを頭の内側に感じる。


「このような事をせねば・・・相手を捻じ伏せられないとは・・・。
 貴殿の戯れに、付き合った俺が馬鹿で・・あった。」

「今の内に吐き出せる言葉は吐き出す事だ。
 もうあとはまともな言葉など吐き出せないだろうからな。」


幸村の最後の足掻きとも取れる台詞も飲み下すかのような勢いで。
ただそれを受け流し政宗は行為を再開した。



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