思い込み戦隊妄想レンジャー

+++05:お前等の武器は拳じゃない、思い込みだ!





あれから何度果敢に挑んだだろうか。
そして何度倒されただろうか。
数えたくも無い。
だってやりたくないと思ったが乗りかかった舟だと頑張ろうとしたんだよ。
何かプライドもなにもあったもんじゃないじゃないか。
むしろなんだよこれ、意味わかんねぇよ!

流石の5人もキングを睨みつける。

「おいキング!
 これじゃ戦えねぇよ!力弱いんじゃ意味無いじゃんか!」

俺等頑張ったのにこんな給料安いのどう言うことだよ!的な目線だ。
しかし先ほどからえらそうな空気を纏う自分勝手な社長様(キング)はのけぞって言う。

「だってその服は雰囲気だしさ。
 アニメや漫画じゃあるまいし服着たからって強くなれるなんて無いよ。」

給料安いのは会社事態あまり儲けてないからだよと。
そんな風な言い草だ。
樹が腐っているのは根が腐っているからだよってことですか。
元も子もない事言うなよ。

「そ、それじゃどうやって戦えば・・・・。」

「あ〜・・・・・なるようになるでしょう?」

マジかよ。
あまりの発言にキング以外、その場にいた人々全員固まった。
キングは『俺しらねぇ』としらを切るつもりだ。

「・・・・ふざけんなよ、それじゃあ俺等じゃなくても・・・いいじゃないか・・・お前がいけよ。」

「そうだよなー、俺たちだって自分達の生活あるしさ。」

「大体意味わかんないわよ!それだったらこんな紛らわしいもの着せないでよね!!」

「それか、ちゃんと説明して欲しかったかな?」

「なんにせよそれなら俺、やる気起きないよ!っていうかリーダーの立場って意味無いじゃんか!!」


子供の夢をぶち壊す事が仕事ですかあんたら、と言いたくなるような発言ばっかりするヒーローたち。
あまりの現実っぷりに目を背けたくなった元夢見る子供な大人たち。
キングの無責任っぷりさに行き成り死地に赴かされたヒーローたちをいっそ不憫に思い始める怪人達。

何だよこのいろんな意味の地獄絵図。


「ああ、まあ、ほら、人生なるようになるさ。」

「なるか!!」

このままでは不毛な言い争いのまま夜が更けそうだ。
しかし今がチャンス。
ガロンたちはキングのとんでもない発言で誤解された自分達の存在を今一度改める好機と踏んで前へ出る。
しかしながら何があっても平気なように怪人達に周りを一応ガードさせながら。

「あー・・・・なにやら誤解をされているようだがわし等は別に侵略しに来たわけでは・・・・。」

「うっせハゲ。」

「ハッ・・・・!!」

黒いオーラを纏い暴言を発したのはリーダーレッド。
多分彼の旧友が彼の今のどす黒いオーラを見たら『あいつ・・・変わったよな』と言いつつ遠巻きに見つめるだろう。

「大体さ、あんたらがここにこなきゃ俺等こんな事にならなかったんだよ。
 それになんだよあんたら侵略するき本当にあるのか?あるのか?
 さっきからチンタラチンタラやってよぉ・・・・。
 俺等が弱いのが拍子抜けってか?弱いヒーローなんてお呼びじゃねぇって?
 好きでこんな事してるんじゃねぇんだよ!」

何だか言い返せない。
言い返したが最後、何だかもっとすごい事言われそう。
ガロンは怯んだ。
と言うか宇宙船内へ逃げた。

「待てよハゲッ!」

「お、おまえらさっきから将軍の事ハゲハゲと連呼して、将軍はハゲじゃないぞ!」

一人勇気ある怪人構えに出てレッドに抗議。しかし彼等の敵は一人じゃない。

「・・・将来はハゲになるんだから問題ないだろう・・・?」

「そこの黒いの!おま、おま・・・将軍はハゲなんかにならない!」

どうやら怪人達に甚く信頼されているらしい将軍ガロン。
しかし彼等はブラックの怒りに触れた事に気付かない。

「黒いの・・・・?
 俺の・・・どこが・・・黒い・・・?」

「黒いだろうが!
 ブラックだろ、むしろ烏だお前、黒いよ!」

怪人達もちょっと必死すぎて言葉がだんだん支離滅裂になり始めてきた。
しかしそんな事は気にせずブラックは続ける。

「・・・・俺は・・・・黄色が好きだ・・・・。」

「だ、だからなんだっ!」

「故に・・・俺はブラックじゃ・・・無い・・・イエローだ。
 黄色なんだよ・・・そうだろ?」

ますます意味がわからないと言う表情の怪人達。

「いや・・・・どう見ても黒いよ・・・?」

ちょっと弱気な発言をした怪人。
瞬間、マスクでわからないがブラックは目を見開いた。
一瞬にして怪人へ詰より怒涛の如く言葉の嵐。

「俺のどこが黒い?黒いって何色だよ。
 大体一般的に決まった黒なんぞ俺は決めない。それにお前、世の中黄色がどれだけの効果をもたらしているか解っているのか?
 野菜と肉に囲まれた弁当開けてみろよ。中身は緑色と肉色だぞ、米の白があっても中和されないんだ。
 そこへ黄色を入れてみろ、美味そうに見えるだろう?
 黄色はな、偉大なんだ。故に!俺は黄色が好きなんだ。黒なんか海苔やひじきぐらいしかないじゃないかよ。
 黒い色の食べ物って言ったら他はイカ墨スパゲティーだぞ、あれ食ってみろよ口の中黒いんだぞ!最悪だぞあれ!」

だんだん意味わかんなくなってきた自称イエローの言葉。
どうやら彼にブラックは禁句らしい事をこのときに理解した他メンバー。
そして怪人達は泣きながら宇宙船内へと走り逃げていく。
他の外にいた怪人達も皆後を追うようにして船内へ。

口々にこいつ等わかんねぇよ、なんか怖ぇよ!と言いながら逃げていた事はこの際無かった事にしてしまえ。

すぐ様宇宙船は飛んでいってしまった。
それは、拓也達の勝利した事を意味する。
周りから歓声が上がり、とりあえずヒーロー万歳!と皆が喜ぶ。
そして今度は拓也達がキングの宇宙船内へと消えていきその宇宙船もまた、空へと飛び立っていった。


「いやー、お見事お見事。」


先ほどから繰り出される拓也のパンチやら、裕也のキックやらをよけつつ明るい笑顔でキングは告げた。
どうやら一発は殴っとかないと気が済まないらしい。

「力は変わらないんなら初めに言っときなさいよ!
 そういう基本がなってない奴って本当馬鹿よね馬鹿。それと阿呆よ!
 常識外って言う奴本当に気に食わないわ!リーダー!早く殴って!!」

あくまで自分からは殴りに行かないしたたかさがいっそ怖い綾香。
一方神楽はただ呆然とその様を見つめているだけ。
庵はと言えば一気に喋ったせいか疲れてぐったりしている。

「ははははっ!
 ま、結果オーラ言って事で。」

「ふざけんなー!!」

「あ、そうそう、君等の名前『思い込み戦隊妄想レンジャー』だから。
 これは歴代から続く由緒正しい名前だよー。何せ俺だって元々レンジャーだったからねー。」

つまり私の後輩だよ、と尚もパンチにキックにと怒涛の如く後輩達の痛い洗礼を避けつつ告げた言葉は清々しかった。


一方ガロン達の宇宙船内では胃薬を飲む将軍と怪人数名。
しかし、この後ガロンは解熱剤も飲む羽目に。

「ガロン様!
 大変です!」

そこに現れたのは綺麗なお姉さん。
なかなか素敵な身体のラインを見せ付けるかのような服を纏っている。
慌てた様子でガロンの元へ駆けつけた彼女を皆は何事だと見つめた。

「どうしたマリーン?」

「ロロちゃんが・・ロロちゃんが・・・!!」

「む、娘がどうした!?」

「キングに誘拐されました!!」


なにぃ!!

船内に響く声はむなしく宇宙空間に吸い込まれていった。





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