思い込み戦隊妄想レンジャー

+++04:闘え選ばれた5人の戦士達!





突如あたりを包んだ光に眩まされた拓也はゆっくりと眼を開けた。
辺りは暗い、暗い。
上も下もわからない暗い場所。

「い、一体ここは・・・?」

「ようこそ、選ばれた戦士達!」

突然聞こえた声に振り返ればそこに立っていたのはキング。
一体何が何だかわからない拓也。しかしそれでも一つ引っかかる事が。

「あの・・・達って?戦士って?」

「君達の事だ。あのガロンと戦う戦士、という事だよ。」

暗闇になれた目で周りを見れば、そこにはなにやら覚えのある顔。
しかもできれば忘れてしまいたい近頃出会った人物ばかり。
拓也をいれて男4人と、女一人。

一人はいつぞや公園で出会った変な人。
一人はバイト先で頑なにカレーを頼もうとしていた人。
一人は道を聞いてきた人を誘拐犯呼ばわりし、終いには拓也も誘拐犯と決めつけた人。
一人は自宅付近でぶっ倒れていた不健康な人。

あまりにもすごすぎる人選じゃありませんかキングさん?
そう彼は思った。そして何ゆえこの濃いメンバーに自分もいるの?
問いたい事で一杯一杯の拓也。
そんな空間に響いた声はいつぞやのカレーの人。

「・・・あんた、地球外の奴等の問題だろう・・・?
 何故俺等が戦わなきゃいけない?」

「そうよ!
 元はと言えばあんた達が勝手にここに来たんじゃない、自分達の蒔いた種でしょう?
 だったら自分達で何とかしなさいよ!
 私たち他人同士よ!?何だか知った顔が一人いるけどそれでも知らない人間同士手を取って一緒に平和の為に戦いましょう?冗談じゃないわよ!」

何気に彼女は拓也の顔を覚えていたらしい。

「・・・ああ、そうだな・・・あんたの言うとおりだ。
 ・・・これはあんた達の問題だ。
 ・・・あんたらで解決するのが、普通じゃないのか?
 ・・・それに確かに、俺もあんたの顔、知ってる・・・・。」

ちらりと拓也の方を見るカレーの人。
嫌なところで記憶力がいいのが人間と言う者だ。

「そうだ、君確かジョギングしてましたよねー、前に会いましたね!」

いっそ爽やかすぎる空気が憎らしく思えるのは、きっと拓也の気のせいではないだろう。

「俺もあなたの顔、知ってますよ。」

青白い人の視線を止めに拓也は顔をそらした。
その様子を見ていたキング。何かを思いついたのかいきなり拓也の肩をがっしりと掴む。

「君が、リーダーね。これ決定。」

「・・・・・・・・はいっ!!!???」

いきなりの決定事項。有無を言わさぬ口振り。
あまりにも唐突すぎた為拓也は突っ込みもままならない。

「な、なんでっ!?」

「だってそこのお嬢さんが言うには他人同士でなんて!ってことでしょう?
 でも君は他の皆とは接触済みみたいだしさ、そういう奴がリーダーの方がしっくり来るじゃない?
 それに俺ほかに仕事あって地球守れないから君等が守ってよ。」

それは知らない土地に旅行へ行く際、メンバーの中である程度その辺りの道知ってる奴をリーダーにするような軽いノリだった。
すぐさま拓也は冗談じゃないと講義。しかしながら聞く耳を持たないキングは決定しちゃったしーとなにやら横っ面を殴りたくなる言い草だ。
キングへの講義は単体じゃ埒があかない。
一回しか面識は無いが彼等彼女の思い込み振りや何だかキャラの濃さから全員で攻めればキングだって思い直してくれると判断を下した拓也。
田舎にいた頃の自分からは想像がつかないほどの行動の早さ。
それは故に人間の本能的な防衛手段。自分可愛さ、と言う奴である。
なんだかんだ言っても拓也だって自分が可愛い、この若さで死地へ赴きたくなんぞ無い。
大体人間相手ならまだしも宇宙人だ。一体どんな手で地球を滅ぼそうとたくらんでいるのか。

あわよくば、他の人間に白羽の矢が当たってくれる事を願いつつ勢いよく拓也は振り返った。

「あ、あなた達もなんとか言ってくれ!?」

振り向き必死に叫んだ言葉。
それにまず答えたのはジョギング人間。

「・・・確かに、そうだな。」

拓也はまず味方を一人ゲットした!と思いこの勢いで他の皆も引きずり込め!とばかりに他3人の顔を見る、が。

「確かに、全く知らない人間同士ではない。
 少なくとも俺は一回君に出会っているからな!
 佐渡裕也だ、よろしく!」

期待とは裏腹にキング肯定派一人出来上がりました。
しかもよろしくって言われちゃった俺どうしよう田舎のお父様お母様・・・・。
自己紹介されちゃった・・・ご趣味はなんですか・・・?
なんてね、あはははははは・・・・・・。

違う世界へトリップしがちになりそうな拓也の耳に次々入ってきた言葉は、更に打ちのめす言葉ばかりだった。

「・・・・そうだな・・・・面倒だが・・・・知っている人間がいるならば、いいか・・・・早乙女・・・庵だ・・・よろしく・・・・。」

「誘拐犯じゃ・・・・無いわよね?
 まぁいいわ、これからよろしく。
 木更津綾香よ。」

「五十嵐神楽です。
 よろしく。」

一人一人、ご丁寧に挨拶と自己紹介。
もうここまできたら腹を括らねばなるまい・・・。


「か、柏木・・・拓也です・・・・。
 しがないフリーターですがよろしく・・・お願いします・・・・。」


さよなら普通の俺の人生、と拓也はここで夢見た『日常』と言う奴とおさらばしたのであった。
その顔は何処か遠くを見つめていたそうな・・・・。






辺りを包んでいた光が収まり、そこから現れたのは五人の戦士。
よく見る5色カラーの戦闘服を身に纏った5人だ。

周りの人間は何が何だかわからないと言った様子だ。
しかし思い出して欲しい、彼らは今は立派な大人だが小さい頃は正義の味方が敵をバッタバタ薙ぎ倒す特撮やアニメ、漫画の主人公に憧れた年頃があったのだ。
この状況からして考えるに至る答えは一つしかないだろう。そう、彼らは地球侵略を企む奴等を倒すべく現れたのだ。
そうなれば彼らに任せるが上策。と言うか彼等だって命が惜しい。
何が悲しくて人間相手にだって梃子摺る不景気な今日この頃なのにこんな天気のいい日に怪人相手しなきゃいけないんだよと言う気持ちで一杯だ。
人間誰しも自分可愛さで心満たされたくなる日もあるさ。逃げたくなる日だってあるさ。
だから彼らは迷うことなく叫んだ。

「地球の平和は頼んだぞ!」

内心から滲み出るだから俺等手を貸さないよ、と言う気持ちも一身に受け取った拓也達。
心中複雑だが乗りかかった舟だ。
たとえ底に穴が開いていようと、泥舟だろうと。
乗ったが最後向こう岸に渡るしかない状態なんだから後はなるようになるさ精神。
当たって砕けろ、だ。

「むっ・・・何だ貴様等は!?」

「地球侵略なんて絶対させないぞ!」

もうやけくその拓也、もといレッド。吐く台詞がコテコテのクサイ台詞だって今は怖くない。
普通の人間ほど吹っ切れたときは恐ろしい者だ。

でも少し待ってくれ。

「むぅ、こうなればやるしかないようだ・・・行け!!!」

ガロンの声で出てきた怪人らしき者。
すぐさま戦闘態勢だが、本当に少し待ってくれ。

「いくぞ!!」

彼等、ほんの数分前まで一般人。
地球の平和を守るべく選ばれたって言ってもそれはキングのランダム人選だ。
いかにも戦闘馴れしてそうな怪人達と、一般人の5人(うち一人女性)。
どう見ても勝ち目ねぇよ。

「ぐぁ!!」

勢いよく出たレッド。
続いて裕也ことグリーン。
尽く怪人にカウンターを食らわされた。
そして庵扮するブラックと神楽こと、ブルー。
紅一点はもちろんピンクな綾香。
皆パンチ一発、キック一発でのされる。
あまりの弱さにガロンや怪人、そして警察や機動隊の方々皆さん。
果ては本人達まで困惑していた・・・・。



どうする貧弱戦隊!!





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