思い込み戦隊妄想レンジャー
+++03:包む光が壊したのは地球か日常か。
いたって快晴。
降水確率0%
洗濯日和。
その日は世間ではまさにそういわれるハッピーデイだった。
しかし拓也にとって人生のベクトルを変える大雨洪水警報雷注意報、洪水津波にご注意ください的な一日になる事など
田舎の両親すらもわかってはいなかった。
「はぁ〜、良い天気だなぁ。」
今日も今日とてバイトの日。
しかしながら今はまだ開店前なので少しだけ暇である。
本当ならば開店してからがバイトの時間なのだが、今日はなぜか早く着いてしまったため
すでに準備の終えた店の中でボケっとしているのだ。
「ほれ、締まりの無い顔をしているとわしまで眠くなってくるぞ。」
ポカン、と今朝のスポーツ新聞で軽く後頭部を殴られた拓也。
軽くなのであまり気にはしないがリアクションはしっかりとやっていた。
これはいつものやり取りで、二人にとっては軽い挨拶と同じようなものなのだ。
やがて後10分ほどで開店となったその時。
--ドオォォン!!!
激しい地鳴りと共に地震が起こり、あたり一体は大きく揺れた。
「な、なんだ!?」
「早く座布団を頭にかぶるんだ!!」
激しい揺れは約10分の間続き、そしてしばらく経ってから揺れが収まったであろう頃合を見計らって店のドアを開けてみた。
そこには巨大な隕石の塊のような物体が浮かんでいたのだ。
大きさは約25mほどといった風の大きな物体である。
その中から異形の者たちが出てきた。
「我々はここから遥か離れた星の者である。」
どうやら喋っているものはボスらしい。
みた感じもそれらしい格好をしている。
周りの人たちが皆呆然としている中警察や機動隊が駆けつけてきた。
「お前たちは何者だ。」
一人の警察官が勇敢にも声をかける。
それに答えるのか、その警察官の方をボスらしき異星人は見つめる。
「私の名はガロン。
私達は先ほども言ったようにこの地球から遥か離れた星に住まうもの。」
「お前達の目的は?」
「目的は・・・。」
「地球を制圧する為だ!」
ガロンと名乗った異星人のボスが警察官の質問に答える前に、どこからともなく声が聞こえ彼の言葉を遮った。
周りにいるもの達は辺りをキョロキョロと見渡す。
その時ガロンたちの宇宙船であろう岩の塊の頭上に突如現れたのはまたも謎の宇宙船。
そこからやはり異星人であろう男が姿をあらわした。
「むぅ!!
キング・・・やはり来たか!
しかしわしは別に・・・。」
「うるさい!
貴様はこの地球を制圧する為にこの地球へ降り立ったのであろう!!??
そうはさせんぞ!」
またも言い分をかき消しての言葉。
キングと呼ばれた男の言葉に辺りにいた者達は動揺し、叫ぶもの者もで始めていた。
警察や機動隊はその慌てた人たちを守る為に辺りを駆けずり回った。
「くっ、こうやって人々を混乱に陥れる事でお前等はこの美しい星を奪うつもりだなっ!!」
「何を言うか!
これは元々お前が・・・・。」
二人のやり取りを見ていた多くの人々は既に避難し始め警察や機動隊も発砲・攻撃の準備をしていた。
しかしながら拓也はなにやら突っ込みたい気持ちになってきている。
何せ先ほどからキングの言い分があまりにもめちゃくちゃで、どう見てもあんたの方が悪者にしか見えねぇよと思っているからである。
先ほどからガロンの言葉を切り言いたい放題。
あれではあまりにも可哀想である、せめて最後まで言わせてあげようよ。
そうこう考えているうちに拓也達の前でけたたましく鳴り響く銃声音。
この日本で、まさか生で聞けるとは思っていなかった耳を劈くような音、音、音。
次に漂うのは立ち込める硝煙の香り。
あまりに非現実な事が起きている為に拓也は状況を把握しきれないでいた。
「おい、拓也!逃げるぞ!!」
店長の声が聞こえ返事をする前に引っ張られる腕。
流石は元々鍛えられた腕をしているだけあって自分を引っ張る腕の力は半端無くすごかった。
なにやらやばい事に自分は立ち会ってしまったのかもしれない。
これから地球はどうなっていくんだろう。
田舎にいる両親は、友人は?
あまりの出来事でフリーズした頭の中に反復される事柄。
一体どうしたらいいのか全くわからない。
やがて人込みに飲まれ始める二人。
「おい拓也、ここまでくればお前一人でも大丈夫だな?」
見知った道、見知った風景、寂れた看板、色褪せた何時の物とも解らぬポスター。
自分の住まう家の近く。わざわざここまでつれてきてくれた事に感謝しつつ店長とはそこで別れた。
店長は何せ店の近くに家族の住む家がある。ほおって置くわけにも行かないだろう。
「と、とにかく・・・・家に行って貴重品集めて・・・それからそれから・・・えっと・・・・。」
ぶつぶつとやる事を考えながら歩き出した拓也。
しかしながら本人は混乱している為気付いていなかった。
その足がまた再び先ほどの騒動の渦中へと向っている事に。
一方ガロンとキングは地球の侵略云々について熱く語っていた。
と言うか侵略する気は無い、嘘をつけ本当はするつもりだろう、といった水掛け論状態だ。
その間にも地球人防衛線の警察と機動隊は果敢にも攻撃を止めない。
しかしながら一向にそれが利いている風でもないのだ。
何か地球人類には考えられないバリアか何かがあるのか。とにもかくにもお手上げ状態なのだ。
そんな足踏み状態だったとき、キングが突然動き出した。
「こうなれば・・・・この地球を守るべく私もひとつ手をうたねばなるまい・・・。」
「な、何をするつもりだキング!
と言うかわしは本当に何もするつもりは・・・。」
「来たれ光!
今こそ正義の心をもつ者を我が前に!」
またもガロンの言葉を遮りキングは何かを叫んだ。それと同時にまばゆい光にあたりが包まれる。
眼をくらませる光に怯むガロンと警察、機動隊の皆さん。
そしてやっと自分が元の場所まで戻ってきてしまった事に気付き顔を上げた拓也もまた、そのうちの一人だった・・・・。
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