思い込み戦隊妄想レンジャー
+++02:出会いは突然それは必然? 後編
昨日の朝のジョギングによって出会ってしまったある意味変な人。
彼に会わないように、今日は少し違ったコースを走ろうと思い拓也はいつも曲がる道を曲がらなかったり、逆に曲がったりしてなんとかその日は会わずに済んだ。
そのため少しだけいつもと違う気分でいる拓也は、バイトのないその日一日をいつもとは違ったすごし方をしてみようと思い街へくりだす。
しかしながら二回目にして定番と化しそうなこの台詞をまたも吐かねばなるまい。
拓也はその時の自分の行動を呪う事になる。
街の中はまさに雑踏。
注意していなくともよく人の肩にぶつかったりもする。
しかし周りも拓也もあまり気にはしていないようすで、拓也は普段入らないような大手高級デパートの洋品コーナーを歩いていた。
「へぇ・・・・高いなぁ・・・・。
やっぱちがうやな、ここは。」
あまりの高額に、驚くと言うよりも逆に感心の気持ちしか出てこない。
拓也はふと、自分の財布を見てみた。
「・・・・・5,274円・・・・これであと2週間持たなきゃだめなのか・・・・ふぅ・・・・。」
ある意味ここへ来たのは失敗だったと思いすぐさま店の外へ。
そして近くのコンビニへより98円の1リットルのお茶を購入。
近くの奥まった人通りの少ない道沿いにある公園内へと足を運んだ。
「お金の無い人間は、こう言うのが一番だよね。」
誰に言うでもなく、そうつぶやいた拓也。
ぐいっと男らしく飲み一息ついたその時。
「いや!
止めてください!!」
「!?
な、なんだ!?」
背後からなにやら女性の何かを拒否するかのような台詞が聞こえてきた。
急いで立ち上がり後ろを向くと、スーツ姿の男性と春の色合いを考えているのか可愛く服を着こなした、可愛い女性がいた。
男は何やら困った表情をし、女性は激しく抵抗している様子である。
拓也は困った人がいれば声をかける性質なわけで、もちろんこんな場面に遭遇すればほおっておけないのが心情。
まぁ、過去それで何度痛い目にあったかはまた別として。
拓也は果敢にもその男に声をかけた。
「あの、どうかしたんですか?」
「いえ、それが・・・・。」
「この男が、私の事を誘拐しようとしていたんです!」
「ゆ、誘拐!?」
いくら人通りが少ないからといってもこんな昼日中、白昼堂々と誘拐を公言されては人としてほおっては置けない。
拓也は男の声を遮るように言った女性の発言に驚きつつも、男を強く睨みつける。
男はそんな拓也に怯みながらも必死に自分の言い分を聞かせようと言葉を紡いだ。
「い、いや違うんだ!
誤解しないでくれよ!
私はただ駅の方向が分からないから、その女性に聞こうと声をかけたらいきなり叫びだして・・・。」
「嘘よ!
そうやって油断させておいて誘拐して、身代金でも要求するつもりだったんでしょう!?」
頼りなげにしかしながら、疑いをかけられてたまるかと言わんばかりに男は主張した。
しかしまたもそんな男の言葉を遮るかの如く女性は声を荒げる。
拓也ははっきり言って困り果てた。
「と、とにかく落ち着いてですね・・・・。」
「あなたもこの男とグルなのね!?」
(おいおい、どっからそんな発想が出て来るんだよ・・・・。)
そう思わざる得ない男と拓也。
一体どうしたもんかと頭をかかえ始めた矢先だった。
「もういいわ!
どうせ私なんか誘拐したって絞ったって身代金なんか出せるわけでもないしお金も無い一般家庭の娘だしね!
しかも私は誘拐し甲斐もないほどに可愛げの無い女なのよ!
どうせ誘拐するならそこらにゴロゴロいる可愛い女の子誘拐しなさいよ!!
そうか、そんな度胸も何もあったもんじゃないから私程度の人間に声をかけたって訳ね!?
所詮あなたなんてその程度の人間なのよ!
そんな奴が誘拐なんて大それた事を考える事事態がそもそもお門違いってやつなわけよ、分かる!?
まぁ、こんな事を考えるあなたなんかに私のいっていることなんて少しも理解できていないでしょうけれどね!!」
一ミクロンほどにも理解したくありません。
そう言いたくなるほどの発言ばかり、しかも毒を交えて言い放つ女性。
終いには訳のわからない事をヒステリックに叫びつつ走り去っていってしまった。
まだ太陽が頭上にあるうちからこうも「誘拐、誘拐」と連呼する女なぞ、確かに可愛げがない気がする。
しかし見た目は普通に可愛いのだ。
黙ってりゃそりゃもう、「あ、可愛いな。」と思う感じに可愛いのだ。
あまりの出来事にその場に立ち尽くした成人男性二名。
お互い顔を見合わせて一つ溜息をついた。
「・・・・あの、すいません・・・なんか巻き込んでしまって・・・・。」
「いや、こちらこそなんだかお力になれずに・・・・。」
先ほどの出来事で意気投合した二人は、駅までの道案内がてら身の上話をして駅の前で何事も無かったかのように別れた。
あれから時間はすぎ今は4時少し前。
日は傾き始め、町はだんだん夜の顔へと変化させていっている中、拓也はそろそろ家に帰ってご飯食べてお風呂入って
今日一日の中であった先ほどの出来事などさっさと忘れて寝てしまいたい衝動に駆られていた。
そのためいつもよりも大またで歩き、早足に自宅へと向かっていたのだが。
「・・・?」
自分の家まで後100mといったところまで来た時。
電信柱のところにうずくまっている男性を発見。
正直、昨日今日と立て続けに嫌な事があったため声をかけるのは流石の拓也でも躊躇われたが
しかしながら本当に具合が悪くて倒れているのだとしたら一大事。
もし明日の新聞で「身元不明の男性、遺体で発見。」などと言う記事で朝刊をにぎわせていたり
その男性が目の前の人であったりなんかしたらそれこそ後味が悪いというものだ。
ここで声をかけてまた嫌な思いをしたとしても、そうなるよりかはずっとましである。
後悔して人生を諦めたくは無い。
まぁ、今までの出会いがこれから先の拓也の人生を後悔だらけにしてしまうことだけは確実なのだが‥・・・。
「あの・・・どうかしましたか?」
「え?」
声をかけて顔を上げた男性。
しかしその人の顔を見て拓也は絶句。
思わず「ぎゃー!」と叫びそうになったがそれは何とか気力と根性で喉元の辺りでストップさせた。
なんせその男性、顔がそこはかとなく青白い。
むしろ心なしか青白いではなくて青いといった方がむしろ正しいとまで思えるほどに見事に青白い。
血色なんざありはしない。
その男に問いたくなる。
「血はちゃんと通ってますか!?」と。
それほどまでに見事なまでに青いのだ。
アニメで言うなればムー○ンよりも少し人肌な青さ。
大げさかもしれないが、今一番伝えやすいたとえはそれだろう。
「だ、大丈夫ですか!?
ちょ、救急車!!」
「・・・・あの、なに慌ててるんですか?」
この男は何をいっているのだと、拓也は心底思った。
もしかして自分がどんな状態か気付いていないのか。
そう思った拓也は思い切って男に聞いてみた。
「何をって・・・、あなた自分の顔の青白さに気づいてますか!?」
そう言って一応持ち歩いているコンパクトサイズの鏡を渡して見せる。
しかしながら男は動揺した素振りも無ければ慌てる様子もなく言ってのけた。
「?
普段通りですがなにか?」
「・・・はぁ!?
ふ、普段ど・・・ってちょ!?
青白いんですよ!?」
「ええ、普段どおり、いたって健康ですよ。」
いや健康じゃねえだろうがよ!
どう見ても重病患者にしか見えねぇよ!
明らかに集中治療室行きだろうがよ!!
そう、声を張り上げて主張したかった。
しかしこの男がいっている事は本当らしく。
この青白ささえなければ普通の健康体の人間にしかいえないくらい普通なのだ。
風邪で寝込んでいる人間が可哀想になるくらいにこの男は憎らしいくらいに普通である。
この人間を前にした高熱患者なんて、自分が寝込んでいる事すら馬鹿らしくなるに違いない。
自分ならば『俺何こんな寝込んでいるんだろうか』と問いたくなるほどだ。
いっそこのまま棺桶にぶち込んでも良いんじゃないのかとも一瞬考えてしまった拓也。
しかしすぐ様そんな負の感情をかなぐり捨てて再度聞いてみる。
「・・・・本当に・・・何ともないのですか?」
「あなたもしつこいですね、いたって健康、むしろいつもよりも血色が良いほうですよ。」
あなた普段はどのくらい青いんですか?
もう聞くのもあほらしくなってきた拓也は、何事も無かったかのようにその男に別れを告げた。
ちなみにうずくまっていたのは立っているのが疲れたからただ休んでいただけらしい・・・・。
いろいろな意味で人騒がせな・・・・。
そう、胸の中で呟きながらとぼとぼと、家へと帰った拓也であった。
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