淵鳥
目を閉じて、その眼球に捉えるのは、暗い闇。
何も見えない闇の中で、淵が見える。
何の淵か。
己の心の奥底なのか、或いは。
波紋が広がり、なにかが飛び立つ。
鳥が一羽。
闇に解けて、色を失ったその鳥は、それでも鮮やかな「闇色」
孤高のままに、己の色を誇示している。
かつては、もっと綺麗な色だっただろうに。
染まった色を恥じることなく、誇って己の色とした。
ならば。
この失った右目も。
恥じ入ることなく誇ればいいのか。
その問いに答える声もなく。闇に響く。
また、波紋。
淵鳥は、飛ぶ。
気高く。
孤高に。
何処までも。
何処へ行く。
何処で生きる?
何処に逝こうか。
己の行き場所も、生きる場所も、逝く場所も。
この縁取られた右目には何も捕らえられない。
あぁ、あの淵鳥は。
俺の右目か。
この身体から切り離された、右目は。
ただ気高く。
孤高に。
離れていった。